アヤメ平を出発してから、また森のように木々に覆われた道を歩いた。しばらく歩くと、眼下に山の斜面を見下ろすことのできる広大な景色が広がる場所に出た。遠くには、連なる山々が見える。壮大な山の風景だった。
そこからは、富士見峠もすぐそこ。峠には富士見小屋があるので、トイレ休憩や水の補給ができる。
しかし、私は着いた途端地面に座り込んでしまった。そうして、皆が富士見小屋で休ませて貰おうと、店主に交渉してくれた。快く応じてくれた店主が、床に敷くマットや毛布まで用意してくれた。皆もバスタオルやら上着やら…色々出してくれたり、足を高くして眠れるようにフリースを丸めてくれたり、靴を脱がせてマッサージまでしてくれた。足の血がドクンドクンと上がってくるのがわかる。しばらく眠らせてもらった。
どのくらい眠ったか分からないが、目が覚めたので起きることにした。頭はボーっとしていたが、体は少し軽くなったような気がした。コリンコ姉とベルが、簡易布団を片付ける手伝いをしてくれて、とりあえず温かい豚汁を食べることに。聞けば、唇が青くなり体が冷たくなるのは高山病の症状との事。山小屋の主が言っていたそうだ。まさか自分が高山病になるなんて。自覚症状が全くなかったのだ。ただ、睡眠不足と荷物の重さが辛かっただけ。そう思っていたのが間違いだったのだろうか。
少し休憩をしてから、今度は尾瀬ヶ原目指して出発。またしてもキャップが私の荷物を持ってくれた。ありがたかった。
富士見峠からは、緩やかな下りからやや急な下りの山道となった。岩があったり、木の根があったり…で、荷物を背負っていたらまた極度の疲労に陥っていたかもしれない。そうして、木々の向こうに見えて来たのは尾瀬ヶ原!広大な湿原だ。太陽も出て来て、強い日差しが夏を思い切り感じさせてくれる。気持ちはすっかり高揚しており、「もっと遊ぼうゼ!真剣に遊ぼうゼ!!」とキャップが叫ぶ。いい大人達が、異常に盛り上がっていた。しかもキャップは、二人分の荷物を背負っていたのに…。
尾瀬ヶ原に入ると漸くフラットな木道になり、歩き易くなった。広大な湿原と広い空に一向は浮かれていた。ちょうど尾瀬ヶ原の中心になるのだろうか、龍宮小屋のある「龍宮」を目指し、そこでしばしの休憩となった。
右を見ても、左を見ても、湿原の向こうに森が広がり、その更に向こうには山が見える。空は、青く広い。心も体も解き放されたかのように、すがすがしい風景と空気を味わうことができた。
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