かりほ庵

九州最終日、前の晩石鹸で洗った髪はさすがにごわついていた。この日は、「かりほ庵」と言う窯元を訪ねる予定でいた。お目当ては、数年前に地元の陶器市でお買い上げした(そして奮発した)小振りの丼である。この器は、一目惚れしたが手持ちの現金がなかった為、銀行へ走ってお金をおろしてまで買った、私にとっての逸品なのだ。それがなんと、大事にしまっておいたはずが一度も使ってないのに、管理が悪く割れてしまった。それに気付いたのが、3年前。そこで、器に添えられていた名刺を頼りにかりほ庵のサイトを見つけ、その丼の名が「朱巻網目姫丼」である事を知り、更に蓋がある事もその時初めて知った。コレは、行かねばと丼に想いを馳せるものの、当時無職だった私には到底旅費も丼を買うお金もなかった。それが、今回のミミズ養殖場見学による宮崎行きを機会にようやく実現したのだ。
工房へ電話をすると、なんと駅まで迎えに来てくれると言うので、JRでしばしのんびり列車の旅。そして駅で出会ったご主人は、見た目→職人、人柄→とてもきさくでよく喋る。元々料理人だったそうで、その為創るものも食に関する器ばかり。ステキな工房は、仲間との共同作業で建てたそうだ。全てが手作り。本当にステキだ。工房に関する事、土地に関する事、自分に関する事、色々な事を面白おかしくお話下さって、とても魅力的な方だった。私の旅の目的がミミズの養殖場見学であったことにも、奥様と一緒に興味深く耳を傾けて下さった。さすがに驚いていらした様子が、私には楽しかった。ミミズに対する人の反応は、とても楽しい。
さて、ここでも一目惚れした器があった。写真手前の大きめの皿である。姫丼と揃いでお買い上げする事にした。そしてもちろん丼の蓋も。
工房や周囲の散歩など楽しんで、ようやく小倉へ向かう。帰りはモノレールの駅まで送って下さった。そちらの方が列車の本数が多く、しかも小倉まで近いのだそうだ。しかし、モノレールの駅までは来た時のJRよりも遠い。そこにも、ご主人の人柄の良さを感じた。降りた車の中から、軽く手を振って下さったご主人。私の中に温かい気持ちが溢れる。
この日は、のんびりと窯元への旅を楽しむつもりでいた為、全ての行動がのんびりと出来た。小倉駅でお茶をしたり、足りなかったお土産を買ったり、空港へ向かうバスまでの時間と最後の九州滞在を楽しんだ。
後日届いた器の入った段ボールには、「プレゼントです。」と書かれた包みに、ステキな角皿が入っていた。ご主人の笑顔が思い出される。
旅は良い。沢山の、ステキな魅力的な人に出会えた旅だった。
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